病気やけがだけでなく、傷ついた心を癒す役割も求められる看護師には患者さんとの良好な人間関係や信頼関係の構築は欠かせません。
そのためには、おもてなしの心で患者さんと接する「コミュニケーション(接遇)」のスキルを身に付ける必要があります。
看護ちゃん
サービスを提供する企業を中心に接遇マナーやスキルの重要性がうたわれ、研修などが実施されています。
医療機関で働く看護師には特にどのような接遇マナーが必要とされているのでしょうか。
この記事では、看護師に求められる接遇のポイントをご紹介します。
看護師に必要なコミュニケーションスキルとは?
コミュニケーションやマナーが大切とひと言で言っても、具体的なイメージはしづらいかもしれません。
まずは、医療の現場でコミュニケーションが大切な理由をお伝えします。
接遇の遇には、「遇する(ぐうする)」で「人をもてなす」という意味があります。つまり接遇とは、おもてなしの心で接することです。おもてなしの心は、思いやりの心ともいえます。
接遇はどうして大切?
おもてなしの心で相手と接することは、看護師だけに限らず誰にでも必要とされるマナーの一つです。
病気やけがにより苦痛や悩みを抱えている患者さんにとって、看護師の思いやりある言葉や態度は、安心感を与えてくれるという意味で特に重要といえます。
医師や看護師などの医療スタッフを信頼できてこそ、患者さんは治療にも積極的になれますし、自分の身を任せようという気にもなれるでしょう。
時には看護師の接遇が患者さんの回復に影響することもあります。
病院が選ばれる時代になっている
また、病院や医師の数が増え、治療内容や施設・設備が多種多様になっている現代は、病院も看護師も患者さんから選ばれる時代です。
病院もサービス業の一つといえるので、医師や看護師をはじめ、職員の印象は病院自体の評価にもつながります。
職員の印象が悪いと、患者さんは「もう利用したくない」と感じるでしょう。
そうした患者さんの不満がクレームに発展すると、スタッフの精神的な負担が増えるおそれもあります。
看護ちゃん
看護師に求められるコミュニケーションは?
具体的な内容については後述しますが、接遇には、身だしなみ、あいさつ、態度、表情(笑顔)、言葉遣いという5つのポイントがあります。
特に病院を訪れた患者さんが最初に目にする、看護師の身だしなみやあいさつ、態度、表情といった項目は第一印象にもかかわります。
看護ちゃん
患者さんに与える第一印象が悪いと、その後の信頼関係は築きづらくなります。
また、敬語を正しく使うといった言葉遣いも、患者さんとの信頼関係を深めていく上で欠かせません。
それぞれのポイントを理解し、接遇マナーを身に付けることが、患者さんとの良い関係の構築につながります。
接遇のポイント①「身だしなみとあいさつ」
身だしなみとあいさつは、患者さんに与える第一印象に大きく関わります。
それぞれのポイントを押さえ、好印象を目指しましょう。
身だしなみのポイント
第一に、清潔であることです。
特に感染予防の点から、白衣はきれいなものを身に着ける必要があります。
髪を派手な明るい色に染めるのは避け、きっちりとまとめましょう。
爪は短く切り、マニキュアなどは塗らないようにするのが基本です。
化粧は派手すぎず、健康的なナチュラルメイクにすることも大切です。
身だしなみで大切なもう一つのポイントは、機能的であることです。
体位交換や診療補助、患者さんの移動など、看護師の業務にはさまざまな動作があります。そうした動作がしやすい服装が求められます。
病院の方針にもよりますが、勤務中に身に着けるアクセサリーは結婚指輪程度にして、その他は控えると良いでしょう。
あいさつのポイント
あいさつは明るくハキハキと行いましょう。
「おはようございます」と言っている声が小さかったり聞こえづらかったりすると、患者さんになかなか伝わりません。
明るくハキハキとしたあいさつのほうが、第一印象は良くなります。
また、患者さんと目が合ったり、廊下ですれ違ったりした際には、声を出してあいさつしない場合でも笑顔で会釈をしましょう。
接遇のポイント②「態度と表情と言葉遣い」
患者さんに対する思いやりの心がよく見えるのが、態度と表情、言葉遣いです。
患者さんによっては、不公平感を感じてしまうので公平に接するように気をつけたいところです。
患者さんに対する態度と表情のポイント
どのような表情で接するかは大切なポイントです。
時と場合にもよりますが、少しでも患者さんに安らぎや元気を与えられるよう笑顔で接するようにしましょう。
看護師が険しい表情や疲れた表情をしていると、患者さんの気持ちも沈んでしまうおそれがあるからです。
どんなに忙しいときでも、落ち着いて行動することが重要です。
看護業務はめまぐるしいものですが、バタバタしたり焦ったりせず、丁寧な対応を心がけましょう。
たとえば、診察室のカーテンや扉の開閉を乱暴にしない、ナースコールには丁寧に対応するなどです。
看護師が忙しそうにしていると、患者さんが言いたいことをなかなか言えず大切なサインを見逃してしまうこともあります。
また、忙しい中でも手を止めて、しゃがむなどして患者さんと目線を合わせ、じっくりと話に耳を傾けるようにしましょう。
共感する姿勢を示すことにより、患者さんの不安や苦痛の軽減を図ることができます。
話をきちんと聞いてくれると感じてこそ、患者さんは本当の気持ちを話しやすくなるはずです。
病気やけがなどで精神的な苦痛を感じている患者さんは、ちょっとしたことから「ほかの患者さんと比べて大切に扱われていない」という不満も抱きがちです。
どの患者さんにも公平な態度で接する気持ちを忘れないようにしましょう。
言葉遣いのポイント
患者さんと話す際は正しい日本語、敬語を使うことが求められます。
仲の良い患者さんでも馴れ馴れしい態度や言葉遣いは禁物です。
たとえば、「じゃあ、今から体を拭かせてもらうからね」ではなく「それでは、今から体を拭かせていただきます」という具合です。
また、患者さんへのお願いは命令口調ではなく、依頼の形にしましょう。
「ベッドに腰をかけてください」ではなく、「ベッドに腰をかけていただけますか」という表現を使います。
難しい専門用語をなるべく使わず、わかりやすい言葉で説明し、患者さんが理解しているかどうかを確認することも大切です。
患者さん自身が治療過程や病状を理解できてこそ、一緒に病状の回復を目指すことができるでしょう。
患者さんに選ばれる病院の顔!心を癒せる看護師を目指して
接遇マナー(コミュニケーション)は信頼感や安心感を与え、患者さんの心を癒すために、不可欠なものです。
接遇を身に付けることは、目の前にいる患者さんのためだけでなく、自らのため、より良い病院づくりのためにもなります。
どんな場所、どういった立場の人であっても、周囲の人と良好な人間関係を築き、気持ち良く過ごせるようにすることは大切です。
今一度、看護師としての原点に立ち返り、接遇マナーをしっかり身に付けて、自身のステップアップにつなげてみてはいかがでしょうか。
看護ちゃん